消費税増税に一言

来年の消費税10%に関して、連日テレビの報道が賑やかになっている。

いろいろな意見が飛び交っているが、私も一言言わせていただく。

前回の消費税のアップ、5%から8%になって、赤字国債は減ったのだろうか、高齢者の暮らしがよくなったのであろうか。福祉の現場の人が恩恵を受けたのであろうか。私は福祉の現場にいるわけではないからわからない。ひょっとしたらそれなりの恩恵があったのかもしれないが、素人考えで報道を見る限り、福祉が改善されたようにも、財政再建がなされているようにも見えない。

 

増税は景気を冷え込ませるだけ

 

なんでこの時期に消費増税なのか。

いや、消費増税はそもそも、2012年に決まっていたことで、目的は財政再建にあった。つまりこれ以上赤字国債が増えると、日本が国際社会の信用を失いかねない、だから消費税増税という外圧があったり、まぁ、そこらへんのことで、当時は民主党政権だったが、消費税増税を決めたんだ。

で、安倍政権になって8%に増税。そのあとは景気が回復しないので、早い話が先送りを繰り返しいてきたわけだ。

どういうことかと言えば、5%を8%にした時に、消費は落ち込み、景気はドスンと悪くなった。アベノミクスで景気が回復したっていうのは、ただの数字のまやかしで、現に日銀が目標としたインフレも達成出来ていない。株価が上がろうと、企業収益が上がろうと、実際の庶民生活が豊かにならないで、景気回復もへったくれもない。そこにまた増税で、どれだけ景気を凹ませるつもりなんだろうか。

数年前に、我が家の近所では大手スーパーの支店が店を閉めた。進出して来た他店に負けた、企業努力が足りなかったというのもあるが、スーパーが店を閉めるなんていうのは、ただごとではない。私が小学生のころからあった、40年以上もやっていた店がである。それほど深刻な不況下で、景気対策の前に、なんで増税なんだろうか。

 

歴史に学べ

 

第16代の天皇仁徳天皇がある日、町の様子をご覧になると、竈から煙が上がっていない。民が生活苦で飯が炊けない。そこで大幅減税を行い、宮殿の修復などは我慢した。やがて、民の竈からは煙が昇るようになったという。財務官僚は「古事記」「日本書紀」を読んでないのかね。

仁徳天皇は伝説上の人物かもしれない。だが、そういう故事を昔の人が書き残したというのは、施政者たる者の心構えとして、のちの人のために書き残したものではないのか。

景気が悪ければ、一番の景気対策は減税である。景気が回復して、人々の収入が上がれば、当然税収も増えるのである。

もちろん、いまの複雑化した時代に、そんな単純なものではないことはわかっている。しかし、少なくとも増税して景気を冷え込ませて、ますます庶民の生活苦に貶めても決して誰も幸福にならないことは間違いのないことである。

 

複雑怪奇な軽減税率

 

だから、財政再建だけでなく、増税分を福祉や教育に当てるし、軽減税率で生活の苦しい人にも配慮する。

果たして配慮しているんだろうか。

飲食は軽減税率で8%、それはいいが外食は贅沢だから10%。どういうことだ? 高級レストランや料亭じゃないぞ。ファミレスやラーメン屋が贅沢な外食なのか? 普通の人は昼間、会社などで働く。昼飯はたいてい外食じゃないのか? 普通に食う昼飯の何が贅沢なんだ?

酷いのはコンビニのイートイン。さんざんワイドショーでやっているが、買って帰れば8%でイートインを使えば10%。コンビニに限らず小売店でも、軽減税率商品と一般商品を扱っている店ではレジなどのシステムを変えなければならないし、店員も対応出来るよう教育もしなければならない。大手はいいが、中小の小売で、それだけの負担増に対応出来るのか。

ましてや、中小売業でカード決済を促進し、ポイント還元するに至っては、その恩恵を受けられる店はいいが、その対応も尋常ではない。なんのかんので、儲かるのはカード会社だけじゃないか。

さっきのコンビニのイートイン、外食産業には痛手だが、これが流行しているのは、コンビニ業界の企業努力が大きい。イートインを利用することで割高になれば、多くの人はイートインを利用しなくなるかもしれない。コンビニの企業努力を政府が潰しにかかるようなものだ。

もっと言ってしまえば、コンビニのイートインがこれだけ流行しているのも、不況のせいである。1000円のランチをレストランで食べるのさえためらう。300円の弁当と飲み物でコンビニのイートインでランチを済ませる人が多いということだ。

それがわかっていて、こんな税制を実行するとしたら、国民に対する弱い者いじめ以外の何物でもない。

 

誰が得をするのか?

 

そもそもの話、2012年に消費税増税を決めたのも、民主党政権末期のポロポロの時期で、当時野党だった自民党に半ば脅かされるように決められたことを忘れたわけではあるまい。選挙で負けて、ふたたび自民党政権になった時に、なんらかの恩恵を受けたい当時の民主党幹部の自民党への擦り寄り政策の一つとしての消費税増税だった。

よく消費税増税で賛成派の意見で出るのは、欧州各国はもっと高い消費税率じゃないのか、という話。福祉が充実していたり、最初から生活必需品には軽減税率が導入されていたり、考え方の根本が違う。

間違っても増えた税収を各省庁でぶん取り合戦している日本政府とは違うのだ。

では、もう一つの賛成派の意見、財政再建をどうするのか、子孫につけを残すのか。景気回復で税収アップが一番いいのだが、なかなか難しいのは現実だ。

小泉さんは「痛みに耐えろ」と言ったが、皆が皆、痛みに耐えられるわけではない。痛みでショック死するかもしれない。そんな時に、耐えなきゃならないような痛みを国民に与える政府は、やはりどこかおかしいのではないか。

子孫につけは残すんだろう。どうにもならない。ただ、我々にも出来ることはある。つけも残す代わりに財産も残すんだ。ビルなんか建てたって駄目だ。そんなものは老朽化して、もっと大きなつけになる。科学技術や文化芸術、そういった財産を、次世代に受け継ぐ、そういうやり方しかないでしょう。

とにかく、このまま消費税アップ、たかが2%でも、消費は確実に冷え込む。抜本的な舵の切り方を考えないと、とんでもないことになりかねない。